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Fuelについて紹介|モジュール式ブロックチェーンとは?

こんにちは。0xMach(@0xMach)です。今回はよく分かってなかったFuelについてまとめていきたいと思います。APTOS、SUIといったMOVE言語を用いたL1やETH L2の他に、モジュール式ブロックチェーンもトレンドとしては押さえておかないといけないと思ったのが今回ブログにまとめた理由です。

【参考】
Learn Modular
モジュール式ブロックチェーンの基礎知識
モジュラーブロックチェーンの第一原理
Fuel公式サイト
最速のモジュール式実行レイヤー「Fuel」のご紹介
モノリシックを超えて。モジュラー・ブロックチェーン・パラダイム
Fuelを支えるチームの紹介
The Modular World
Unpacking Celestia

Fuelを理解するにあたっての前提

今回Fuelについて調べていて、理解するには以下2つの前提を押さえておく必要があると感じました。

≪Fuelを理解するにあたっての前提≫
■モノリシックとモジュール式ブロックチェーンの違いを押さえる
■Celestiaについて理解する

したがって今回はまずこの2点について触れたうえでFuelについてまとめていくといった構成で行きたいと思います。

モノリシックとモジュール式ブロックチェーンの違い

ブロックチェーンの中核的な機能は以下の通りです。

ポイント

  1. Execution(実行) - トランザクションの処理と計算
  2. Settlement(決済) - 紛争の解決と橋渡し
  3. Consensus(コンセンサス) - トランザクションの順序付け
  4. Data availability(データの可用性) - データが利用可能であることを保証する
モノリシックを超えて。モジュラー・ブロックチェーン・パラダイム」より

従来、ブロックチェーンの設計はモノリシックでした。これは、ブロックチェーンのすべての機能が単一のレイヤーで処理されることを意味します(図の左側)。一方、モジュール式ブロックチェーンはこれらの機能を分解することで特定の分野に特化することができ、大幅な最適化を図っている点が特徴です(図の右側)。Fuelはモジュール式ブロックチェーンの位置づけであり、Execution(実行)を可能な限り効率化することに特化しています。

Celestiaについて

次にCelestiaについても紹介します。Celestiaの場合、Data availability(データの可用性)とConsensus(コンセンサス)しか扱わないので、同じくモジュール式に分類されます。図で表すと下記のとおりです。

モノリシックを超えて。モジュラー・ブロックチェーン・パラダイム」より

図の右側がモジュール式を表していますが、左側のモノリシックと対比してみると分かりやすいですね。モジュール式の利点は後ほど説明するとして、ここでは機能ごとにレイヤーを分解してそれぞれに特化したレイヤーを担っているのがCelestiaやFuelであるとざっくり理解しておきましょう。

ポイント

  • Celestia:Data availability(データの可用性)とConsensus(コンセンサス)を扱うモジュール式ブロックチェーン
  • Fuel:Execution(実行)を扱うモジュール式ブロックチェーン

なお、上図"Monolith"~"Celestium"までのフレームワークについてはUnpacking Celestiaで詳しく解説されていますので参考まで。また、CelestiaについてはロイさんのYouTube「ホワイトペーパー読書会」で学習するのが良いと思います。

Fuelについて

Fuelを作ることになった経緯

では、軽く触れましたが本題のFuelについてまとめていきます。NickとJohn Adler(Fuel LabsとCelestia Labsの共同創業者)は、当時イーサリアムを悩ませていたスケーリング問題に対応するため、2019年半ばに最初のoptimistic rollupとしてFuel v1を開始しました。しかし、総スループットの増加はせいぜい控えめなもので、イーサリアムのトラフィックが多い時期には、L2はコストを低く抑えることができないといった問題からL2だけではスケーラビリティの危機は解決できないと感じました。そこでFuel v1のメインネットローンチ後すぐにFuel v2(すなわち現在のFuel)の開発を開始しました。(「Fuelを支えるチームの紹介」より)

Fuelの特徴

Fuelは、Execution(実行)を可能な限り効率化することに特化することで最高のセキュリティと柔軟なスループットを提供します。それには以下3つの中心的な柱が大きな役割を果たします。

Fuelの特徴

  • トランザクションの並列実行
  • Fuel仮想マシン(FuelVM)
  • 優れた開発者体験(SwayとForcを使用)
公式サイトより

トランザクションの並列実行

Fuelは、UTXOモデルという厳密な状態アクセスリストを用いてトランザクションを並列実行することで、比類ない処理能力を実現しています。その結果、Fuelはシングルスレッドのブロックチェーンよりもはるかに多くの計算、状態アクセス、およびトランザクションのスループットを提供することができます。

Fuel仮想マシン(FuelVM)

FuelVMは、EVMの欠点と教訓の両方から改善が図られ、同時に開発者の潜在的なデザインスペースを大幅に拡大するように設計されています。

優れた開発者体験(SwayとForcを使用)

Fuelは、Swayと呼ばれる独自のドメイン固有言語と、Forc(Fuel Orchestrator)と呼ばれる支援ツールチェーンを提供しています。これによりFuelの開発環境は、Solidityのようなスマートコントラクト言語の利点を維持しつつ、優れた開発者体験を得ることができます。

なぜモジュール式ブロックチェーンが注目されるのか

次になぜモジュール式ブロックチェーンが注目されるのかまとめていきます。

公式より(左:モノリシック 右:モジュール式実行レイヤー)

こうした技術発展で解決したい課題としてはヴィタリックが掲げるスケーラビリティのトリレンマがあります。これはブロックチェーンがスケーラビリティ、分散化、セキュリティを実現しようとすると、そのうちの2つしか実現できない、というものです。

ヴィタリック氏が提唱したトリレンマのイメージ図(出典:https://vitalik.ca/general/2021/04/07/sharding.html)

このトリレンマを解決するためにL2やシャーディングの技術も使われています。これは今回のモジュール式ブロックチェーンも同様です。しかし、モジュール式ブロックチェーンの面白いところは、「ブロックチェーンがスケールするためには、ネットワークを検証するためのコストを増やさずにスループットを向上させる必要があり、このような「真のスケーラビリティ」を実現するために設計されたものである」と謳われている点です。

以下、Celestiaの公式HPを引用します。

スケーラビリティ
ユーザーの増加に伴い、ブロックチェーンは処理できるトランザクションの数も増やさなければなりません。しかし、ブロックチェーンが処理する取引数を増やすと、チェーンを検証するために必要な作業量が増えます。チェーンの検証が難しくなれば、ノードを運営できる人が減り、ブロックチェーンはより中央集権的になります。

Scalability
As users increase, blockchains must also increase the number of transactions they can process. However, increasing the number of transactions a blockchain processes increases the amount of work required to verify the chain. If it becomes more difficult to verify the chain, then less people can run nodes and the blockchain becomes more centralized.
Transaction throughput measures how many transactions a blockchain can process, commonly referred to as transactions per second (TPS). To scale, a blockchain must increase the number of transactions it can process without an equal increase in the cost to operate a secure node.


トランザクションスループットは、ブロックチェーンが処理できるトランザクションの数を測定するもので、一般にTPS(transactions per second)と呼ばれる。ブロックチェーンがスケールするためには、セキュアなノードの運用コストを等しく増加させることなく、処理できるトランザクション数を増加させる必要があります。


If a blockchain can increase the number of transactions it processes without equally increasing the cost for nodes to verify the transactions, it is scaling. Scalability is a core property of modular blockchains which ensures they can increase capacity without making it costly for users to verify the network. Technologies like fraud proofs, validity proofs, and data availability sampling used in the modular blockchain stack enable nodes to verify transactions more efficiently than full nodes while maintaining equivalent security.

モノリシックなブロックチェーンのスケーリングソリューションは数多く提案されており、例えばシャーディング、ロールアップなどはネットワークの検証コストを増やさずにスループットを向上させることを目的としています。これらのソリューションの中には、Execution(実行)をL2にアウトソーシングするなど、拡張性を高めるためにモジュール化の側面を取り入れているものもあります(下図の枠線)。

しかし、L2 はメインネットワークの性能に大きく制限されるため、最終的にモノリシックな L1 に依存し続ける限り、スケーラビリティのトリレンマが問題として残ります。

真のスケーラビリティ、すなわち分散性を維持したままスループットを大幅に向上させることは、モノリシックなブロックチェーンにとって難しく、スケーリングするためにはイーサリアムのようなチェーンはモジュール性を最適化(例えばExecution(実行)レイヤーを完全にアウトソーシングすること)する必要があります。

セキュリティを維持しながらスケーラビリティと分散化を最適化する全く新しいパラダイムを創造することがモジュール式ブロックチェーンの目的です。Fuelは、モジュールスタックのための世界最速の実行レイヤーを構築することで、この課題に取り組んでいます。

イーサリアムやEVMの制限にとらわれず、モジュールファーストの観点からスケーラブルな実行に取り組むFuelは、EVMの非効率な実行環境を大幅に改善し、最大の分散化と最高の柔軟なスループットを可能にするとして注目されています。

Supporters

Fuel Labsは先月$80Mの資金調達を発表しました。サポーターにはALAMEDA RESEARCH、BLOCKCHAIN CAPITALなどが挙げられます。

公式より

SwaySwapについて

最後にFuel上に構築されたUniswapのような高速DEX(SwaySwap)のテストネットが公開中なので早さとか体感してみたい人は是非触ってみましょう。簡単ですが以下ツイートで手順をまとめていましたので参考にしていただければと思います。

【免責事項】

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