こんにちは、0xMach(@0xmach)です。今回はいくつかのGaming ecosystemsを比較してみます。元々IPよりも広いGaming ecosystemsに興味があったのと、ゲームの流れが加速した際に成長の余地がある領域だと思ったので調べてみました。また、毎月VCの資金調達を確認する中で大手VC(a16z等)がゲームプラットフォームへ投資するケースが増えてきている印象を受けました。そこが仮にトークンを発行した場合、既存のGaming ecosystemsを調べておくことで一定の比較ができるかも、といった事も今回調べるに至った経緯になります。
比較対象・比較項目
【比較対象】
$RON $IMX $MYRIA $GALA $MAGIC $OAS
比較項目
- 概要・今後の展開
- トークンのユースケース
- アクティブユーザー数
- tokenomics
以上の項目を比較していきたいと思います。なお、あらかじめ理解しやすいようにそれぞれ以下のとおり分類しました。
それでは早速見ていきましょう。
概要・今後の展開
$RON
Ronin Network ($RON) は、Roninブロックチェーンのエコシステムトークンです。
2022年3月にRonin Bridgeがハッキングを受け、当時日本円で720億円(17.36万ETH, 2550万USDC)の被害を受けました。その後は開発元Sky Mavisが$150Mの資金調達を完了。資金はハッキング被害の補填(ユーザーへの返済)に充てられました。リード投資家はBinanceでAnimoca、a16z、Paradigm等も参加しました。(参考:https://axie.substack.com/p/funding?s=r)
今後の重要なアップデートとして、3月に現在のPoAメカニズム (Proof of Authority)からDPoSに移行することを発表しています。この移行に向けたSTEPとして2月7日にKatana の流動性プールの構成が再編されました。また、DPosへの移行により$RONの単体ステーキングも可能になります。
ポイント
- WETH/AXS および WETH/SLP プールからの排出報酬は終了
(ETHの代わりにRONを中心にエコロジーが再開発) - 新しいRONプールとその排出量報酬は下記のとおり
- RON/WETH流動性プールの排出報酬は、1日あたり60,422RON
- RON/AXSプールの排出量報酬は、1日あたり24,169 RON
- RON/SLPプールからの排出権は、1日あたり約12,084RON
- RON/USDCプールからの排出権は、1日あたり合計約24,169RON
バリデーターになるには、TOP21に入らなければなりません。少なくとも500k 以上の RON が必要になります。運営もDiscordで下記のように答えています。
「数値はまだ 100% 確定していませんが、これは信頼できるバリデータ用です。誰でもバリデーターを実行し、コミュニティによって委任された十分な RON を取得してトップ 21 の RON 委任に入ることができれば、潜在的にブロック報酬 + 補助金を獲得できます。リリースが近づくにつれて、2 月にさらに多くの情報をリリースする予定です。これを第 1 四半期にリリースする予定はまだあります。契約は現在監査中です。」
なお、500k 以上の RON を持つすべてのアカウントを以下で確認できます。
https://explorer.roninchain.com/accounts
現在のバリデーターにはYGG、Nansen、DappRadar、Animoca、Google Cloud等が挙げられます。
ポイント
- DPoS移行に伴い、$RONの需要が高まる可能性
- Binanceが資金調達のリードやBinance-Ronin間のブリッジの開設等、Binanceへの上場期待がある
- Axie以外にも人気タイトルを生み出せるかが鍵か
$IMXと$MYRIA
Immutable X($IMX)とMyria($MYRIA)は共にL2のプロジェクトでZK-Rollupの技術を用いています。また、両者ともスケーリングを意識しており、ガス代0で取引できる点も特徴が似ています。ということでまずは両者を比較してみようと思います。なお、現在$MYRIAはまだリスティングされていません。
【TVL・Activity】
(TVL)
ImmutableX : $126M
Myria : $77.94k
(Activity)
ImmutableX : $8.3M(30D count)
Myria : $6.35k(30D count)
大体、TVLでいうと15倍、Activityは12倍の開きがあります。
(Myriaはゲームタイトルもこれからなので当たり前ですが)
【注目タイトル】
続いて注目タイトルでの比較。Immutable Xは「Guild of Guardians」、「GodsUnchained」、「Illuvium」といった注目タイトルがある一方でMyriaの方はそこまでありません。(自分が知らないだけかも知れません)
【VC/チームメンバー】
Immutable XにはCoinbaseやAnimoca等のVCが関わっています。Myriaについては不明ですが、チームメンバーはどちらもAAAタイトル開発に携わったエンジニアが多数在籍しているようです。
ポイント
- ZK-Rollupの技術を用いて高速かつ高セキュリティを維持している点やガス代を0にしている点で差別化が図れる
- 逆にMyriaはImmutable Xとの違いをどのように出していくかがポイントか
- どちらも今後注目タイトルをどれだけ生み出せるか
$GALA
Gala Games($GALA)はGalaエコシステムでさまざまなNFTグッズを購入するためのユーティリティトークンです。代表タイトルのTown StarがAIBC Award 2022で最高のブロックチェーン ゲーム賞を受賞するなど、エコシステム自体盛り上がりましたが、バブル崩壊により現在は勢いがなくなっている印象です。
今後はどのような展開を見せていくのでしょうか。ここからは「2023年Gala戦略」からポイントをピックアップします。
Galaは2023年のゲーム戦略の柱として下記の4点を掲げています。
この中でも特に「②モバイル制覇」と「ユーティリティの保護」が重要と考えます。モバイル用ゲームタイトルのリリースと同時にゲーム内通貨(ジェム)を取り入れ、$GALAのバーンを結びつけることで$GALAの需要を高めつつ、エコシステムを拡大させていくことが1つの狙いの様です。また、Town Starのゲームトークン$TOWNから$GALAへ変更することを発表しています。これにより、今後リリースタイトルされるゲームトークンに$GALAを採用するケースも増えてくる可能性があります。
もう1つは、独自L1チェーンへの展開です。これによりガスや手数料として$GALAが使われることになり、ユーティリティの保護に繋がるとの事です。
他にも音楽に特化したプラットフォーム「Gala Music」やWatch & Earnの仕組みを導入した「Gala Film」のリリースを控えており、かなり盛沢山の内容となっています。個人的には一気に手を広げすぎてて心配になるレベルです。
ポイント
- モバイルへの移行に積極的
- $GALAの需要を高める幾つかの変更が盛り込まれている
- Gaming ecosystemsの競争が激化する中でMusicやFilm等、様々な方面に進出していくことが功を奏するか
$MAGIC
$MAGICはTreasureエコシステムのユーティリティトークンです。
TreasureDAO、$MAGICについてはCrypto Timesさんから詳しい紹介記事が出ていますのでそちらが参考になります。
ポイント
- Arbitrumでポジションを確立しており、チェーン自体の伸び代も見込める
- AAAタイトルに焦点を当てているImmutable XやMyriaと比較してインディーゲームに焦点を当てて差別化できている
- 他チェーンへの展開や既存プロジェクトの呼び込み等、ヒットゲームを含めてどこまでエコシステムを拡大できるか
$OAS
OASIS($OAS)はエコシステムで中心的な役割を果たすネイティブトークンです。
日本発のプロジェクト「Oasys」 は、ブロック生成のためのコンセンサスアルゴリズムにPoSを採用し、初期ValidatorにはSquare Enix、Bandai Namco Research, SEGAといった業界の伝統的なゲーム パートナーが含まれます。
仕組みとしてはレイヤー1(Hub-Layer)とレイヤー2(Verse-Layer)の2層で構成されており、Hub-Layerはデータを安全かつ安定した方法で保存および交換することに特化しているため、アプリケーションを直接実行することはできません。一方でゲームプレイによって生まれる大量のトランザクションはVerse-Layerで処理することで処理の高速化を図っています。また、プレイヤーはガス代が0である点も特徴です。このようにOASISはゲームに特化した設計となっています。
ゲームタイトルとしては日本初のNFTゲームとして公開されたMMORPGNFTゲーム「My Crypto Heroes」や2023 年第 2 四半期にはDMM GAMESから公開された人気のブラウザベースのゲーム「かんぱに☆ガールズ」のリリースが予定されている等、日本のゲーム・IP(知的財産)を展開できる強みがあります。
ポイント
- 最初からゲームに特化したチェーンとして設計・構築している
- 日本のゲーム・IP(知的財産)に精通したメンバー構成で日本のゲーム・IP(知的財産)を展開できる強みがある
トークンのユースケース
続いてトークンのユースケースで比較します。これはどれも似たり寄ったりです。大きな違いとして、独自チェーンのトークンはガス代としても消費できることです。
取引手数料 | Staking | Governance | Node購入 | NFT購入 | ガス代 | |
$RON | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
$IMX | ◎ | ◎ | ◎ | |||
$MYRIA | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
$GALA | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎(将来的に) | |
$MAGIC | ◎ | ◎ | ◎ | |||
$OAS | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
アクティブユーザー数
続いてアクティブユーザー数の比較です。まず初めにOASIS($OAS)のMediumを引用します。
Gaming ecosystemsを比較するに当たって幾つか項目を挙げましたが、やはり一番重視すべきはアクティブユーザー数だと思います。TVLだと比較がしやすいですが、上記にもあるとおりブロックチェーンゲームにおいてはTransaction VolumeやDAUの方が重要と言えます。一方でTransaction Volumeでの比較だとBOTをどう除外判定するか等、正確な比較が難しい気はします。今回はDappRadarからUAW(unique active wallets)で比較してみたいと思います。
代表タイトル
$MYRIA、$OASは開発途中でまだデータがありません。ひとまずの指標として、Axie Infinityのこれまでの推移を取り上げます。
それでは各エコシステムの代表ゲームを中心に一覧にまとめます。(2023.2.10の1日分のデータ)
# | UAW | Transactions | Volume |
$RON(Axie Infinity) ※全盛期 | 744.19k | 6.7M | $77.79M |
$RON(Axie Infinity) ※現在 | 11.05k | 45.94k | $2.12M |
$IMX(Gods Unchained) | 1.38k | 12.41k | $845.29k |
$IMX(Guild of Guardians) | 44 | 72 | $2.23k |
$IMX(Illuvium) | 11 | 12 | $25.78k |
$GALA(Town Star) | 88 | 233 | $124.83k |
$MAGIC(TreasureDAO) | 901 | 2.74k | $154.38 |
Transaction:(UAW)とDappのスマートコントラクトの間で行われたトランザクションの合計数
Volume:Dappトランザクションの受信フィアット値
AxieのUAWは全盛期の1/70程になったとはいえ、他の人気ゲームとの差はまだまだありますね。
また、各チェーン毎のAverage Daily DAUも参考にしたいところです。
tokenomics(2023.2時点)
続いてtokenomicsについて比較していきます。
$RON
Market Cap | $140,868,037(Rank #227) |
Price | $0.81 |
Max Supply | 1,000,000,000 |
FDV | $817,176,926 |
Blockchain | Ronin blockchain |
Staking Rewards | 25% |
Incentives | 30% |
Sky Mavis | 30% |
Ecosystem Fund | 15% |
・$RONリリーススケジュール(発行開始後294ヶ月で最大供給量に到達)
$IMX
Market Cap | $753,739,274(Rank #62) |
Price | $0.94 |
Max Supply | 2,000,000,000 |
FDV | $1,899,184,110 |
Blockchain | Ethereum Layer 2 |
Ecosystem development (ユーザーへの謝礼、開発者への助成、流動性の提供、マーケティングに充当) | 51.74% |
Project Development (Immutable X プロトコルの開発に充てられます) | 25% |
Private sale | 14.26% |
Public sale | 5% |
Foundation reserve (エコシステム開発関連のイニシアティブに割り当てられる) | 4% |
$MYRIA
Max Supply | 50,000,000,000 |
Blockchain | Ethereum Layer 2 |
Node Emission (Myria Nodeオペレーターへの毎日のMYRIAノード配布) | 36% |
Ecosystem Fund (流動性の提供、コミュニティへの報酬、開発者への助成金、マーケティング 等) | 40.2% |
Project Development (サービス プロバイダーによる Myria プロトコルの開発関連) | 21% |
Strategic Reserve (戦略的エコシステムの開発または成長関連) | 2.8% |
$GALA
Market Cap | $332,947,433(Rank #126) |
Price | $0.044 |
Max Supply | 50,000,000,000 |
FDV | $2,207,143,419 |
Blockchain | Ethereum,GYRI |
トークン配分 | 不明 |
$MAGIC
Market Cap | $308,482,081(Rank #132) |
Price | $1.47 |
Max Supply | 350,000,000 |
FDV | $512,613,480 |
Blockchain | Ethereum Layer 2 |
Tresure Farm | 33% |
Mining | 25% |
Staking/Liquidity | 17% |
Ecosystem Fund | 15% |
Team | 10% |
$OAS
Market Cap | - |
Price | $0.087 |
Max Supply | 10,000,000,000 |
FDV | $882,249,961 |
Blockchain | Oasis(独自チェーン) |
Ecosystem/Community | 38% |
Staking Rewards | 21% |
Development | 15% |
Early Backers | 14% |
Foundation | 12% |
まとめ
tokenomicsをまとめます。総合的に見ると個人的には$RONが過小評価気味に感じました。また、明確にチームやFundへの割当を分かているケースはそれほどありませんが、チームしては30%前後が標準と思われます。ロックアップスケジュールについては期間も感覚もかなりバラつきがありました。
今年はゲームが注目される中で、ますますGaming ecosystemsの競争が激化することが予想されます。今回比較したエコシステムはそれぞれ独自の特徴があって優劣が付け難かったです。もちろん魅力的なエコシステムであることは重要ですが、Axieのようにキラーコンテンツを生み出すことができるかがさらに重要になってくるかなと思います。
ゲームタイトルなんて次々出てきて追えないよ、という方(自分も含む)、あつまれ クリプトの森さん(@news_no_mori_)がなんと《Web3Gaming辞典》を作成してくれましたのでブックマーク推奨です。ではまた。